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講師辞任のお知らせ


一昨年から西和賀高校の美術部で関わらせていただいてきた、アニメーション制作の講師としての役割を、辞することに致しました。

もともと美術部の生徒さんとギンガクの皆さんがアニメーション制作への熱意を持ってお声がけくださったのがきっかけでしたが、講師といえども、私にできることは距離的にも予算の関係でも限られていて、また生徒さんが自由に使えるパソコンがないなどのハンデがありました。

そんな環境でも、最低限で有意義になるようにと発想法やトライの要点などをお伝えして、ギンガクの皆さんがすでに持っていた編集環境を活用していただきながら、進めて行くつもりでしたが、ギンガクの皆さんは演劇を中心とした一連の芸術振興企画の運営が優先的にあり(美術部の皆さんも西和賀町の芸術参加者としてギンガクと共に活動したりしていて)、アニメーション制作になかなか時間を割けない日が続き、いつの間にか私が講師として入っているという体勢は崩壊してしまっていた状況で、今後も私が講師としての役割に責任を持つことは難しいと判断しました。

西和賀町の芸術活動に対しては私は意義を感じていたので、忙しさとその都度の予定変更に対しては私も寛容に、美術部でのアニメーション制作もやわらかい達成イメージで考えてきていました。自主性についても大いに受け止めて見守ってきました。アニメーションは環境も時間も自然に生まれるもんじゃないし、どうしても手間がかかるものですから、尚のこと慎重に、進言してきました。なるべく短く、プレビューを大事に、編集ソフトを触りながらと。この最低限の3つでも十分な学びになります。真っ先に「アニメーターズサバイバルキット」的な作画を覚えることよりも、完成に向けて合理性を徹底することよりも、アニメーションが「止まっているものが動いて見えること」であると体感し、想像したものが新たな命を持つ瞬間を知ることを優先してきました。かなりシンプルでありつつも、原理に触れる繊細な歩みだったと思います。

先日の雪の演劇祭2018では、ポスターに他の企画と並列にアニメーション上映が記載され、私の名前も講師として載せていただいていました。私はてっきり、雪の演劇祭の中の一つの企画として、運営にも携わる美術部サポートのスタッフの方がWSから引き続きアニメーション制作に協力していただけているものだと思っていました。が、実質少なくともアニメーションの部分は他の企画やプログラムとは優先順位の異なるサブ的な企画だったようで、高校演劇アワードなどもあって忙しかった現場ではアニメーションプログラムに対してほとんど手付かずでした。このことが直前になって知らされ、結局当初から共有されていた予定を急遽変更して当日を迎えました。またその現場での制作経過、体制の取り方は、その忙しさの中で独自に優先順位を入れ替えたもので、私の講師としての指導内容からは変質したものでした。当日に上映したものがあの内容になったのは私にとっては不本意であり、忙しさを考慮しても本質的に納得できるものではありません。

また、この変更に関して、後日改めて詳細が公表されることもなく、私の考えについて言及することもなく、ギンガクさんは特に問題はないものとしてSNSで報告されました。

その後ギンガクさんからは、アニメーション制作以外の企画の運営に力を入れすぎたことは事実で、スタッフにも演劇プロジェクトに参加していた美術部のメンバーさんにも、全体的にオーバーワークをさせたこと、また当日直前に、上映のために形だけでも整えようと編集を私に丸投げしようとしたことについては謝って頂きましたが、指導内容の変質とそれに伴う成果の報告の責任については、最後まで理解して頂けませんでした。今回私は、完成を課していたわけでなかったので、オーバーワーク自体は事前の報告と相応の対応があれば特に問題だとは考えるつもりはありませんでしたが、本質的な食い違いはもっと別のところにありました。

私も方針を持って名前を出して活動しているので、その方針に反することや崩壊した体制に関わり続けるのは、改善か対応していただけなければ避けるしかないところです。

今後どのように継続していくべきかを話し合いで導き出そうとしましたが、最終的には、講師として関わる個人作家としての私と、あくまでもメインを演劇に見据えている運営側のアニメーション制作への責任の持ち方のバランスが、合致しそうになかったことが決定打となりました。もともと独自にアニメーションに取り組んでこられていた西和賀の皆さんでしたから、自分たちなりのやり方でアニメーションを作って、ちょっと不自由した時に私が専門的なソフトでクオリティを上げる手助けをする、というような体制を想定していたのかも知れません。だからこそ、雪の演劇祭での上映の予定は最後まで下げずに、上映内容が変更になったことについても私の考えについては発信・言及せず、今後についても忙しくなりすぎるのを気をつければ自分たちでやっていける、と判断されていて、そのつもりでSNSでの報告も行っていたようです。しかし、私が講師として名前を出して関わる場合のアニメーションは、もう少し専門的な知見を活かしていて、初心者なりにとにかく取り組めばいいとか、とにかくアニメが作れればいいという単純な志ではなかったし、私もちょっと編集ができる程度で講師を名乗るつもりはないので、講師として公表していただく以上は、私の責任の取り方は理解していただかなければならなかった。経験値や知識の上からより苦労を減らすやり方を組めるはずのところもありましたが、それらは実行されませんでした。人のつくる環境として信頼関係を築けなくなってしまった今後は、ポスターなど公式な場面で名前を出すような関わり方をすることは出来ないように思います。

非常に残念な気持ちはあるのですが、これまでのWSで美術部の生徒さんたちの制作のために助けになりそうな情報はお伝えしてきたので、現場で引き続きアニメーションに取り組んでいくことは可能です。もし引き続き制作されて完成作品がどこかで発表されることがあれば非常に楽しみです。部活や組織としてどこかに必ず責任が生まれる体制が崩壊し自由になったことは制作にとって必ずしも悪い変化ではないので、これまでのアニメーションへの取り組みが良い経験として今後に生かされることを願っております。

にしても、予算と時間とトライをあまり必要としないでも実現する商業アニメーションの制作法は強いなと思いました。普段自分で商業ベースの手法をとるときにもその便利さは肌で感じていて理解していたつもりだったんですが、今回はあえて一回原理を学べるようにとアドバイスを続けてきて、その旨を西和賀の現場の皆さんにも伝えてきていて合意も得てきていたはずなのに、高校生も大人も含めていつの間にか自然とどんどん商業的な合理的な手法を取っていくのを見て、その強い浸透力に驚く驚く驚く。着地点として完成品を見る機会が圧倒的に多いから想像しやすいということでももちろんあるんだろうけども(クオリティにばらつきがあるのも特に気にならないご時世だし)、迷う可能性を排除した、目指しやすい共有し易い、数字的にも印象的にも達成感を得やすい選択肢は優しいんですね。こんな形で商業アニメの強さを実感するとは思ってなかったけど、勉強になりました。

商業アニメ(リミテッド)はアニメーションの領域の中では応用的な思考だと思うので、はじめてアニメーションをやるとなったときにまずそこを目指させる土壌があること自体は喜ばしいことだけど。でも絵が動いて見えるように、どの動きを選んで描くのか、どの瞬間を拾うか、結局その原理に触れていかないと、時間表現としてアニメーションと向き合っていけない。なんならアニメーションに食われる表現しかでき無くなる。作画崩壊、無駄打ち、質感重力喪失になりかねない。完璧な技術はそんなすぐには習得できないにしても、その世界を見据えて取り組むのと見えていないのとでは、描いてるものが全然違う。そのその原理を学ぶのに、手順も時間もハードルがとても高い(ちょっとした設計ミスで崩壊する危険性がある)物語商業アニメをグループで目指すのが良いかというとやっぱりそうとは限らない。むしろ向いてない。「やりたいようにやらせればいいじゃないか」という考えには、「自由にどんどん失敗しても良いことにして学ぼうとする」には良いとしても、「みんなで公式に取り組んで完成を上映させたい」場合には勧められないわけです。特にまだ編集ソフトも触れていないようなクラスには。

あと、学びの場を守ることの大事さも痛感。こんなにも何気なく、緩やかに静かに、合理性に淘汰されていくものなんだなと、恐れ入った次第です。あぁヤツはいつもこんな風に突然現れて満面に満ちる自信でこちらを見ている。なんだよ哀れんでくれるなよ。その背後のクソ積み重なったトライアンドエラーアンド妄想こそがお前を合理たらしめているんだよ。 併せて、学校って、専門性を守らなかったら、ほんとうにただの言い伝えの共有組織とか、孤立した小さな集落のようなものになり易いんだなと。いまブラック校則とか就活の時期の早すぎ迷惑問題とか色々あるけど、学びの場がなんのためにあるか、誰が誰に何を身につけてもらおうとしているのか、学んでもらおうとしているのか、環境を維持する大人の中で尊重しあえないと、学生はただ振り回されて終わりますよね。学生の自主性を尊重することと、わざわざ間違った方向に行くとわかってて黙ってるのとは話が違う。

と、わかっていてもうまくいかない現場がたくさんあるんだろうなぁ。

ある意味年度末らしい記事でした。お世話になりました。


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